密室の演劇

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天井をみていた。ビジネスホテルの硬いベッドに横になって。眠られない夜。天井にぼんやりと灯りの輪が浮いている。何の飾りもない天井。
出張してきてクライアントに最終提案、契約書にサインをもらうはずだった。だが無駄に終わった。プロジェクトは何だったのか。先方の意見で何度も修正し、ようやく了解を得た計画が水の泡。坂道を転がる感じ。部下に作業を強制し、費用もかけた。プロジェクトリーダーの俺の責任。この失点で社内の風当たりが強くなる。
天井の灯りに何か這う。クモか、いや大きい。毛のはえた生き物。ネズミがあんなふうに天井に貼りつくだろうか。頭部を動かしている。いきなり目が合った。ギョッとした。昼間、提案したクライアントの社長の目、目だけでなく顔もそっくり。今までの賛同を反故に、手のひら返しの反対。結局サインを拒否した社長がまさかこんなところに。生き物はかさかさと天井の灯りから消えた。疲れている。眠ろう。
その他
公開:24/02/16 09:42

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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