ハイ皿のイイエ

2
1

「もう席で吸える方が珍しくなってきたな」
男は白いため息を吐き出し吸い殻を灰皿にねじ込んだ。
「はい。あ、巨峰サワーとハイ皿ください」と対面する部下は店員を呼び止めた。
新入社員でいわゆるZ世代というやつか。上司として普段からケアしなければと行きつけに誘ったのだ。
そうやってこの店で何人もの部下を労ってきた。
「灰皿ならこれ使えよ」「いえ、灰皿じゃなくてハイ皿です。YESの皿です」
「ハイ?」
「煙草を吸えば灰が出るのと同じように、発した言葉とは裏腹な感情がある場合、
精神的ストレスになるのでソレを吐き出す為の皿は今はどの店でも置いてるんです」
「う…裏腹な言葉ってなんだ」「要は、相槌にイイエの要素があれば皿に出した方が良いですよ。課長も使ってください」
「使…、俺はいい。いいかそもそも仕事ってのはだな…」


「新しいのと交換しますねー」
店員がもう灰皿とハイ皿を交換していった。
SF
公開:24/02/08 07:02
更新:24/02/10 10:35

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容