新しい鍵

冬の訪れにこたつを出した今日。私はしっかりとこたつに鍵をかける。
鍵をかけないとこたつに睡魔が住み着いてしまう。中に入った人を眠らせてしまう。
睡魔は人がいない内にこっそり忍び込んでしまう。だから家とこたつを出る時は施錠が必須だ。
それに睡魔は毎年進化している。去年の鍵を使おうものなら軽々ピッキングされるだろう。
だからこたつの鍵はインフルエンザワクチンみたく毎年新しいものを用意する必要がある。
今年は息子も受験生。こたつで寝落ちして、風邪でも引いたら一大事。
目を光らせる私。その甲斐あってこの冬、誰一人こたつで寝落ちしなかった。

春の訪れにこたつを片付けていたある日。息子が聞いて欲しい話があると言ってきた。
息子はこたつで勉強している最中、夢を見ていたようだ。将来なりたい自分を見つけたようだ。
…親として、その夢は応援してあげなくちゃね。
私は夢の扉を切り開く鍵を息子にそっと手渡した。