新しい鍵

昔、大怪我を負った私を助けてくれたのはお医者さんではなく鍵使いのお姉さんだった。
「キミ、運が良いね。さっき新しい鍵を沢山買ったから試しに使ってみたかったんだ。その怪我、閉じてあげるよ」
そう言ってお姉さんは私の傷口に鍵を差し込むと次々と閉じてくれた。
「これでもう大丈夫。でも、怪我が治ったわけじゃないからちゃんと病院で治療するんだよ」
お姉さんの言葉通り、血は止まったけど体は痛いまま。だけど傷を閉じてくれたおかげで私の身体には後遺症も傷も残っていない。
その代わり、私の身体には今でも鍵穴がいくつもある。そこをコチョコチョすると、あの時の記憶が出てくる。間違って開けようものなら傷も開いてしまうので要注意。
そんなお姉さんに憧れ、大人になった私も鍵使いになった。
鍵使いになったからこそお姉さんと再会できた。
「再開と新しい鍵使いの誕生に乾杯！」
お姉さんはとっておきのお酒の鍵を開けてくれた。