懐かしい思い出

　姉が、話題になっているクラゲを持ってきた。
　普通のクラゲと違って、海の中ではなく空中をぷかぷか浮かぶらしい。

　私はクラゲが嫌いだ。
　だから、部屋中に放った姉に対して「やめてよ！」と怒ったが、姉は「刺さないし怖くないよ」と笑った。

　そうじゃない。海でクラゲに刺されたのがトラウマなんだ。楽しく泳いでいたのに、激しい頭痛で死にかけたことがある。
　私は姉にクラゲを回収させ、部屋から追い出した。

　気持ち悪くなり、電気を消して布団に入る。
　どんなクラゲの情報も遮断していたのに、まさか、実物を見せられるとは。

　天井を眺めていると、不思議なことが起こった。小さな光が部屋の中を漂っている。
　昔、姉と蛍を見た記憶が鮮明に蘇る。私たちは、肩を寄り添って沢山の光を眺めていた。

　忘れられない思い出が、まさか一日に二回やってくるなんて──。
　そう思いながら、私は姉の部屋へと向かった。