私はお姫様

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私は絵本のお姫様だ。
私は凶暴なドラゴンが守る高い高い塔の上で、王子様が来るのを待っている。
そして、ドラゴンを倒した王子様とめでたく結ばれ幸せになるのだ。

………なんて、時代錯誤にも程が無いだろうか?

そもそも、何で見ず知らずの男と恋に落ちなきゃいけないんだ。
そう言うと、本当はちっとも凶暴じゃないドラゴンが困ったように言った。
「お姫様。そりゃあ、それが筋書きってもんだからでさぁ」
勝手に生み出しておいて、勝手なことを言う。
私はお姫様でも、私なのだ。何がやりたいか、何処へ行きたいか、誰と恋したいかは、私が決めて然るべきだ。
よし。
私がドラゴンにある提案をする。ドラゴンは目を丸くして最初は拒絶したが、粘り強く説得したらようやく首を縦に振った。
私は多分、生まれてから初めて心の底から笑みを零した。



その日、とある絵本からドラゴンとお姫様が煙のように消えてしまったと騒がれた。
ファンタジー
公開:24/02/10 11:32

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