私の大切なもの
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薄暗い居間で涙を流していると、姉が唐突に話しかけてきた。
「もしかして未海も使ってるん?」
姉は鞄からリングケースのような箱を取り出し、開いて見せた。
何も入っていないように見える。
不思議そうに首を横に振ると、姉は肩を竦めてから、徐に箱から“何か”を指で掬いだす。姉の指をよく見ると透明なコンタクトレンズが付いている。
「これは嘘泣きレンズ。どんな時でも、少し目に集中するだけで涙を流せるよ」
なるほど。だから高級そうな箱に入ってるのか。
納得していると、姉は「便利でしょ」と笑った。
「怒られた時に泣けば大抵許してもらえるからね。レンズ使ってないと泣けないようになるけど、まあ誤差よ」
姉は「未海も使ってみる?」と箱を見せつけたが、私はまた首を横に振った。
高級な物を借りるのは気が引けるし、それより何より、今日が私たちの好きな母の葬式だったから、というのが大きかった。
「もしかして未海も使ってるん?」
姉は鞄からリングケースのような箱を取り出し、開いて見せた。
何も入っていないように見える。
不思議そうに首を横に振ると、姉は肩を竦めてから、徐に箱から“何か”を指で掬いだす。姉の指をよく見ると透明なコンタクトレンズが付いている。
「これは嘘泣きレンズ。どんな時でも、少し目に集中するだけで涙を流せるよ」
なるほど。だから高級そうな箱に入ってるのか。
納得していると、姉は「便利でしょ」と笑った。
「怒られた時に泣けば大抵許してもらえるからね。レンズ使ってないと泣けないようになるけど、まあ誤差よ」
姉は「未海も使ってみる?」と箱を見せつけたが、私はまた首を横に振った。
高級な物を借りるのは気が引けるし、それより何より、今日が私たちの好きな母の葬式だったから、というのが大きかった。
SF
公開:24/02/09 23:20
更新:24/02/09 23:28
更新:24/02/09 23:28
ショートショート初めてですが、何卒宜しくお願いいたします。
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