福はうち、鬼もうち

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ある節分の夜。売れ残って安くなった恵方巻きを買って帰宅している途中で、鬼を見つけた。大きな体の鬼は、縮こまって泣いている。
「…あ、あの、どうしたの?」
「うぐ、お、オラ、今日は、どこの家にも入れねんだ…みんなが、鬼を外に追い出しちまうから…うぅ…」
そう言われて合点がいく。今日は節分だ。当然、どこの家でも豆撒きをしている。
鬼は外、って。
「う、へ、へ…ぶえっくしょぉい!!!こ、こんな寒いのに、ずっと外なんて耐えられねぇだよ…」
真っ赤な顔が青くなり、紫色に変わっていく。あまりにも見ておられず、「うち来る?」と声を掛けた。鬼は目を丸くして、そして涙を流して喜んだ。
「ええんだか?ええんだか!?ありがてぇ…お礼に、お前さんの家に入り込む悪ぃ奴らはオラが追っ払ってやるからな!」
節分の夜に出来た新しい同居人のお陰で、私はそれから病気も怪我も、人間関係のトラブルにも見舞われることは無くなった。
その他
公開:24/02/03 07:45

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