新しい鍵

カギ農家の私は今年収穫したばかりのカギの出来具合を見て満足する。
早速、子どもが産まれたばかりの妹に甘カギを送った。
見た目は甘柿そっくりな甘カギ。皮を剥いて食べると他人にも自分にも甘くなる。
もし旦那がワンオペさせるようならこれを食べさせるといい。旦那の上司や同僚に食べさせてもいい。周囲の人をその甘さで優しくさせるんだ。
それと弟には渋カギを干して作った干しカギを食べさせるとしよう。
渋カギは食べると流行の最先端、渋谷色に染まってしまう。渋カギを食べて変わってしまった弟に、両親は苦々しい顔をしていた。
都会に染まるくらいならいいが、最近調子に乗っているのが鼻につく。干しカギを食わせ、反省させなければ。
木偏に鍵と書くこの柿に似た食べ物は人の心を開かせる新しいカギだ。
ちなみに私は去年まで無職だった。
姉から海で獲れた生カギを食わされたところ、岩に張り付くように実家の農業に定職させられた。