川のほとりで

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「すみません、誰かおりますでしょうか?」

やっぱり返答はなかった。

海沿いのこの町は、ついに過疎を極めて誰もいなくなったみたいだ。

この歳になるまで、勇気が出ずに降り立つことができなかった町ではあったが、少しばかり決心するのが遅すぎたような気がする。

「やっと帰ってきたよ。寂しかったよね、きっと」

呼吸が苦しい。酸素がもうすぐ足りなくなる。

お墓のそばに小川がひっそりと流れている。

近くには骨洗浄するための場所が用意されており、昔、敵と戦って殉死した戦士達を労ろうと、祈祷を兼ねて造られた。


私の夫は、地球を守るために、必死に体を張って戦い抜いてきた。だが、どうしても異星人の放つ電磁パルスには敵わなかった。

「今度は私が、あなたの代わりに守るからね」

酸素は残りわずかしかない。

墓に紫色の花を一輪供えた還暦の女性は、手早くモビルスーツを身につけ、天空へと飛び去った。
青春
公開:24/02/05 08:39
更新:24/02/05 09:06

かずま( 関東地域 )

2023/10/19に参戦した新参者です。忌憚のないコメントお待ちしております。

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