地震程度で

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後部座席に上司を載せて社用車で信号待ちをしているとき、車が浮き上がるようにして揺れた。地震だ。車内でも気が付くぐらいだから、相当大きい。
それなのに、上司は寝ぼけたことをいう。
「おいおい、ビビッて震えてんな」
「別に震えていませんよ。こんな地震ごときで」
「いやいや、震えてんだろ。この車が揺れるぐらい、ブルブルと」
揺れが大きいからか、車から人がぞろぞろと出てきた。なぜか空を見上げている。
「日本人だから地震は慣れています。だいだい、この程度の揺れでなんでそんなにビビらないといけないんですか」
上司は変な笑い声をあげた。
「お前は昔から鈍感だけど、最後まで治らんかったなあ。まあ、もうなるようにしかならんからどうでも良いか」
「まるで地球が破滅するみたいに……」
そう言いかけて、オレは口をつぐんだ。
ルームミラーを見ると、炎に包まれた巨大隕石が地球に迫りつつあった。
SF
公開:24/01/24 07:45

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