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春の目覚めの一歩手前。
枝には蕾の点描が目立つ桜の木の前に、春の女神が舞い降りた。可愛らしいタンポポの冠をつけて、陽だまり色のふわふわなロングヘアーと薄桃のワンピースを柔らかな風に撫でられるままにして微笑み、首からネックレスのように下げている桜色の真新しい鍵はほのかな光を放っている。

「さぁ、みんな起きて…。今年はいつもより暖かいから、もうお外に出てくる時間よ。素敵な春の鍵を作ったの。」

春の女神が優しい声で桜の木に話しかけると、太い幹に鍵穴が現れる。その鍵穴にお手製の春の鍵をさして回すと、一番膨らんでいる蕾の一つが花開き、中から小さな桜の妖精がふわりと飛び出した。

「おはよう♪」

春の女神が桜の妖精の頭を白く細い指で撫でるとくすぐったそうに笑う。無垢で愛らしい笑い声が柔らかな空まで響いていくと、残りの蕾も膨らみはじめる。
目覚める、目覚める。今年の春もゆっくりと…。
ファンタジー
公開:24/01/22 21:58
月の音色 新しい鍵 春よ恋、こーい♪

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

読んでくれてありがとう!

寒い季節になったから、気が向いた時にふらりと立ち寄ってゆるーく投稿しています。

少し早いですが、よいお年を!

 

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