6
2

春の目覚めの一歩手前。
枝には蕾の点描が目立つ桜の木の前に、春の女神が舞い降りた。可愛らしいタンポポの冠をつけて、陽だまり色のふわふわなロングヘアーと薄桃のワンピースを柔らかな風に撫でられるままにして微笑み、首からネックレスのように下げている桜色の真新しい鍵はほのかな光を放っている。

「さぁ、みんな起きて…。今年はいつもより暖かいから、もうお外に出てくる時間よ。素敵な春の鍵を作ったの。」

春の女神が優しい声で桜の木に話しかけると、太い幹に鍵穴が現れる。その鍵穴にお手製の春の鍵をさして回すと、一番膨らんでいる蕾の一つが花開き、中から小さな桜の妖精がふわりと飛び出した。

「おはよう♪」

春の女神が桜の妖精の頭を白く細い指で撫でるとくすぐったそうに笑う。無垢で愛らしい笑い声が柔らかな空まで響いていくと、残りの蕾も膨らみはじめる。
目覚める、目覚める。今年の春もゆっくりと…。
ファンタジー
公開:24/01/22 21:58
月の音色 新しい鍵 春よ恋、こーい♪

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

いつもご訪問ありがとうございます!
元:ネモフィラは咲うです。大原さやかさんのラジオ「月の音色」では、ペンネーム:花笑みの旅人として投稿しております。

日常に寄り添い、読んだ人がほんのすこ~しだけ前向きになれるような物語を書けたらいいなぁと思っている街灯の明かりをこよなく愛す人です。

最近1番幸せだなぁと感じるのはゆっくり眠っている時。その次がお散歩してる時かな?

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容