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生徒は全員、高齢者で白髪。みんな短く刈り上げ、同じ上下のジャージを着ているので、男女の見分けがつきにくい。窓の外は薄暗い夕方。先生は背を向けて黒板に向かう。白チョークの乾いた音だけが教室に響く。ある生徒は黒板の文字を目で追うが、ノートは真っ白。別の生徒は机に突っ伏して眠り、ときどきニヤリと笑う。黒板を見ずにノートにすごい速さで筆記する生徒は意味の通らない文字を延々と書き続ける。誰かが足で突いたサッカーボールがゆるゆると机の間を転がり誰かの椅子に当たって止まる。その席の生徒は毛糸の玉を両膝で挟んで編み物をする。編み物はどんどん伸びて前の生徒の頭を覆う。先生はずっと板書して黒板の右端までいっぱいに書くと左端を黒板消しで消し、そこからまた書き始める。教室の後ろの隅でみんなに背を向けて立っている生徒がいる。立てと言われた理由を思い出すために壁に向かい何時間も立っている。その生徒は私である。
その他
公開:24/01/25 10:24
2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。
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