巾着袋
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白装束の男女が列を成して歩いている。彼らの誘導をしているのは、何年も使い古した浴衣を着ている船頭であった。
その船頭は、彼らを川に浮く小舟へと丁寧に案内し、5人揃ったら出発する係を申し受けている。
すると、草むらの方から少し遅れて若い男が駆け寄ってきた。
「この舟に乗るのかい?」
船頭はその男に尋ねた。
「…はい、ただその前に渡したいものがありまして…」
若い男は、小さな巾着袋を船頭に差し出した。
「これ、娘さんのですよね?」
「…どうしてこれを?」
「娘さん…涼子は交通事故に遭ったんです。それで、病院の看護師さんからこれを預かったんです。ずっと右手で持ってましたと」
その男は、白装束を身に着けていなかった。
「娘さんに会ったら渡してください。ぼくが舟に乗ります」
後から来たその女は、定員に達した舟の行く末を、涙ながらに見つめることしかできなかった。
その船頭は、彼らを川に浮く小舟へと丁寧に案内し、5人揃ったら出発する係を申し受けている。
すると、草むらの方から少し遅れて若い男が駆け寄ってきた。
「この舟に乗るのかい?」
船頭はその男に尋ねた。
「…はい、ただその前に渡したいものがありまして…」
若い男は、小さな巾着袋を船頭に差し出した。
「これ、娘さんのですよね?」
「…どうしてこれを?」
「娘さん…涼子は交通事故に遭ったんです。それで、病院の看護師さんからこれを預かったんです。ずっと右手で持ってましたと」
その男は、白装束を身に着けていなかった。
「娘さんに会ったら渡してください。ぼくが舟に乗ります」
後から来たその女は、定員に達した舟の行く末を、涙ながらに見つめることしかできなかった。
その他
公開:24/01/18 03:35
更新:24/01/18 08:54
更新:24/01/18 08:54
2023/10/19に参戦した新参者です。忌憚のないコメントお待ちしております。
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