荷物検査

あの世の手荷物検査は厳しい。
地獄に行くにしろ、天国に行くにしろ、持ち込んではいけないものが多い。
スマホなんてその最たるもの。死者は生者に連絡を取ろうとするものではない。
怪しいものはないかと目を光らせる。
今、私の目の前にあるボストンバッグなんて滅茶苦茶怪しい。
中から生体反応がする。裁判を行わずに地獄なり天国なり行くつもりか？博打が過ぎやしないか？
中を確かめようとする私の手を先輩が止めた。
「そいつは天国に運んでくれ」
中を確かめずに告げる先輩。私は驚きを隠せない。
「その中には笑顔が詰まっているんだ。ここでむやみに開けるものじゃない」
そう言って、バッグにゴム手袋を括りつける。その中には紙吹雪？
「知りたいなら、お前がこれを運んでくれ」
先輩に言われるがまま天国にバッグを運び、集まった人達の前でチャックを開ける。
中から出てきたタイツ一丁のおじさんの楽しいショータイムが始まった。