光る蜂へ

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「この瓶に入っている光は蜂が集めたんだ。この光は消えることがない」
透明な硝子瓶の中で眩いばかりの光を放つ。
最近、養蜂を始めた友人が「蜜を採集しているわけではない」と言うので、不思議に思い何をしているのかと養蜂場を訪れた。
蜂は、蜜蜂とそっくりだが「光蜂」と呼び、友人が発見した新種らしい。
光蜂の働き蜂は、日当たりの良い場所や、南向きにソーラーパネルが張られている住宅の屋根など、太陽光線が降り注ぐ光源を求めて移動する。近い場所にある光源なら円形ダンス、遠い場所の光源なら八の字ダンスを描きながら目的地に向かって飛び立つ。
無数の働き蜂は、光を吸収すると目的地から巣箱に戻り、六角柱のハニカム構造をした巣板に光を貯蔵する。
巣の奥では、一際大きな光蜂の女王が鎮座し、働き蜂が光の王冠を捧げる。その光は、いつまでも絶えることのない光蜂の繁栄を象徴するかのように、蜜のごとく黄金に輝いているという。
その他
公開:24/01/14 08:08
ソーラーパネル 光源 円形 八の字 ダンス 巣箱 ハニカム構造

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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