白の車輪は降ってくる

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「これかなぁ…」

粉雪の舞う静かな森。
ボサボサ頭に紺色エプロンの青年が、黒いトレーに舞い降りてきた雪とルーペ越しににらめっこしている。

「もう少し丸みのある方がいいんだよなぁ…」

唇を尖らせて彼が吟味しているのは雪の車輪。今、雪の結晶を車輪として使ったオーダーメイドの白銀自転車が小さな雪の妖精達に大人気。溶けないように雪に流れる時を魔法のトレーで瞬時に止めて作る車輪は一つとして同じものがなく、そこが妖精達の心を掴んで離さない。青年は白銀自転車の職人なのだ。

「…あっ!これっ!」

モソモソ頭がふんわり白く染まる頃、納得のいく車輪を調達できた青年は森の奥の工房へと急ぎ帰り、ランプの灯りでカチャカチャカチャと夜明けがくるまで自転車づくりに没頭した。

「わぁ!ぴかぴか~♪」

完成した白銀自転車を見た妖精は、まんまるおめめを輝かせて初雪みたいにひんやり柔らかなキスを青年の鼻先にした。
ファンタジー
公開:24/01/13 21:53
更新:24/01/13 22:11
雪の結晶とても好き 車輪みたい 寒いからあたたかくして のんびり過ごそう

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

いつもご訪問ありがとうございます!
元:ネモフィラは咲うです。大原さやかさんのラジオ「月の音色」では、ペンネーム:花笑みの旅人として投稿しております。

日常に寄り添い、読んだ人がほんのすこ~しだけ前向きになれるような物語を書けたらいいなぁと思っている街灯の明かりをこよなく愛す人です。

最近1番幸せだなぁと感じるのはゆっくり眠っている時。その次がお散歩してる時かな?

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