マイ鏡餅

鏡開き。私は私の名前の書かれた鏡餅に槌を振り下ろす。
まるで石を叩いたかのような感覚。割れる気がしない。
隣では弟が無邪気に自身の鏡餅を槌で一口大に砕いていく。
私の方はいくら力を込めようとも、ヒビ一つ入らない。
鏡餅は自身を映す鏡である。祖父がよくそう言っていた。それは間違いではない。
プライドの高さと保身でガチガチに固められた私という人格。ちょっとやそっとじゃこの殻は割れない。
自由な弟は殻なんて破り放題だ。でもそれも今だけだ。社会人になってしまえば私みたく自身の殻を破れなくなる。
もう諦めようと槌を置く。弟がそれを持ち、二槌流で私の鏡餅を叩き始めた。
するとどうだ。鏡餅が割れ始めたではないか。何で？
「何でって、あんちゃん。僕らが楽しそうにしていると絶対に扉の鍵開けて顔出すじゃん。それと同じ事をやっているんだけど？」
鏡餅とは自身を映す鏡である。
悔しいけど、本当にその通りだと思う。