不幸の絵手紙

「この風景が見られる場所を訪れないと不幸になります」
そんな文言とともに１枚の絵手紙が届く。
斐伊川堤防桜並木。どうやら島根県から送られてきたもののようだ。
ああ…私ってば本当に不幸だ。この場所に行きたくても行けないのだから。
病魔に蝕まれた今の私の身体では、島根県どころか隣町に行くのだって厳しい。
だからこそ、こんな絵手紙を送ってくる奴を恨めしく思う。
同時に感謝を伝えたくもある。
絵手紙の風景はネットで見るものとまた印象が随分と違う。
もしこれを、私の目で見られたとしたら、どんなふうに映るだろう？
生で見る感動を味わいたい。
そう思うと病気になんて負けてられない。これを見れずに死ぬなんて、死んでも死にきれない。一生後悔する。
この場所を訪れると、きっと私は幸福感に包まれるだろう。
そしてその気持ちのまま、次の不幸の絵手紙に描かれた場所へと向かう。
見てろよ。絶対に完治してみせるからな。