逆浦島太郎

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ほんの出来心だった。
公園で一服して、煙草を池に捨ててしまった。
ふっと白い息をはいて帰ろうとしたとき、

「兄ちゃん、ちょっと待ちな」
振り返ると、足元に一匹の亀がいた。
口に煙草を咥えている。
「なんですか・・・」
「たばこをくれてあんがとよ。おかげでこの池は俺の一人勝ちだ」

一人勝ちとはどういうことだろうか。まわりには他の亀はいない。

「お礼にいいもんやるよ。」
亀は池に中に飛び込むと、小さな箱を甲羅に乗せて戻ってきた。

「煙草の礼だ。家に帰ったら開けな」

箱を持ちかえり、玄関まで来た。こんなものを持っていたら家族に怪しまれる。
その場で開けることにした。
すると箱からもくもくと煙がたちこめた。

「ただいま」

「あんたこんな時間まで何やってたの、宿題終わったの?」
いるはずのない母親がいた。家は田舎の実家そのものだった。

私は小学生のような小さく若々しい姿になっていた。
その他
公開:24/01/14 13:54

空飛びペンギン( 関東 )

ご覧いただきありがとうございます。

俳優業の傍ら、趣味でショートショートを製作しています。
田丸先生の書籍を読んでから、楽しく作っております。
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名作文学の朗読Youtubeを行っています。
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