お祓い

ひと月前、事故に遭った私は一部の記憶を失い、幽霊が見えるようになった。
そんな私を周りは勿論、両親まで不気味がる。
皆には幽霊が見えていない。私にだけ、何故かはっきりと幽霊が見えてしまっている。
何とかしたかったのだろう。どうにかしたかったのだろう。
神社仏閣を巡っては話を聞き、霊媒師に頼んでは、私にお祓いを受けさせた。
「この子には悪霊が憑りついておる！」
大仰に大麻を振り回す霊媒師。
いつものように無意味なそれを受けていると、フッ…と体が軽くなる。
もしかして本当に悪霊が！？
…そんなわけなかった。
ただ私が、私の身体から抜け出ていただけだった。
…ああそうか。思い出した。
元の私はあの事故で死んだんだ。その死んだ私の身体に、今の私は憑りついたんだ。
私の足下には横たわる私の身体。
心臓の止まったそれは元の死体へと戻っていた。
お祓いなんてしなければ、こんな事にはならなかったのにね…