嘘つき男に兎の制裁を

「もう二度と浮気はしない。約束するよ」
甘い言葉を囁く彼。私を抱き寄せる。
あとはキスの一つでもすれば、いつも通り私が許すとでも思っているのだろう。
…ほら。予想通り。唇を重ねてきた。
しかも舌まで入れてくる。その舌を思いっきり噛み切ってやった。
「何しがやるクソアマ！こんな事してただじゃ済まねぇぞ！」
怒り心頭の彼。
「テメェは俺の財布だ！黙って俺の言う事を聞きやがれ！」
彼の本音が止まらない。
そりゃそうだ。私は彼の二枚舌、嘘をつく舌を噛み切ったのだから。これで彼はもう嘘がつけない。
能ある鷹は爪を隠すらしいが、能ある兎は牙を隠す。
か弱い兎を演じながらずっとチャンスを伺っていた私。
脱兎の如く彼から逃げ出す。怒り心頭の彼の背後に炎が見える。
まるでカチカチ山だ。彼にはそのまま泥船に乗ってもらおう。
お巡りさんに助け舟を出してもらう。
言い訳は裁判で聞こう。言い訳が出来たら…だけどね。