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激しい雨がやみ、青空のキャンパスが陽光に輝く。ここへ虹を描くのが私の仕事。
「はぁ…」と深いため息をつき、七色のペンキの入ったバケツを少し乱暴にガチャンと足元へ置いて空と向き合う。虹を描く時に一番大切なのは心を晴れやかにご機嫌にしておくこと。さもないと…私は苦い表情で描いた虹を見る。やってしまった、両端をぷくっと膨らませた虹が空にかかっている。絵を描く時、描いている絵の表情と自分が同じ表情をしていることがある。その逆で、描いている自分の表情に絵の表情が似てしまうことも。虹はこの性質が特に表れやすく、ご機嫌斜めな私の描いた虹はふくれっ面になってしまった。刷毛を持ったまましばらく空とにらめっこしていると、小鳥が虹の傍へ飛んできた。小鳥は虹のふくれっ面が面白かったのか「ちちちっ」と笑いながらその頬をツンツンした。すると虹は笑い出し、膨れた頬がぺコンとへこんで、それを見ていた私も笑顔になっていた。
ファンタジー
公開:24/01/04 12:00
更新:24/01/04 18:58
虹は描くものなのかもしれない 今年もよろしくお願いします

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

読んでくれてありがとう!

寒い季節になったから、気が向いた時にふらりと立ち寄ってゆるーく投稿しています。

 

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