弟の初恋

私は友人に「今年から年越しジャンプをしないでほしい」とお願いする。
変なお願いに首を傾げる友人。そりゃそうだろう。私だって、こんな事に意味があるとは思っていない。だが、可愛い弟の頼みなんだ。
私の弟は友人に恋している。まだ小学校低学年の癖に、友人にふさわしい男になれるよう努力を始めている。
１０歳も年下の弟の頼み。それを友人は聞き入れてくれた。１０年後が楽しみだ、なんて笑ってくれた。
友人は本気にしていなかったが弟は本気だった。
年越しジャンプをしなくなった友人に代わり、必死に年越しジャンプをする弟。
年の差・身長の差を越えようと躍起になっている。そんな弟の姿を私は微笑ましく見ていた。

それから１５年の月日が経った今日。友人と弟が結婚式を挙げる。
初恋は実らない。それすらも飛び越えて、弟は一途な愛を貫いた。友人はそれに応えてくれた。
二人なら、この先の困難も一緒に飛び越えて行けるだろう。