トリック・オア・ダイ

0
1

 呼び鈴が押された。
 わしが仕方なく玄関のドアを開けると、幼稚園ぐらいの子どもが、死神のコスチュームを着て二人並んで立っていた。
 二人は、かわいらしい声で、叫ぶ。
「トリック・オア・ダイ」
 二人は手にしている大鎌をゆらゆらと揺らした。そうか、今日はクリスマスか。けど、それにしては掛け声が違う。わしは優しく諭す。
「トリック・オア・トリート、ではないのかね。それでは”悪戯か死か”になってしまうよ。さあ、もう一回言ってごらん」
 二人は声を合わせた。
「トリック・オア・ダイ!」
 わしは困惑した。表情をよく見ると、二人はガイコツの化粧をではなく本物のガイコツだ。つまり、本当の二人死神だ。
「トリック・オア・ダイ」
 二人の催促に、わしは答えた。
「妻も死んでいまや一人暮らし。だから悪戯は苦手でな」
 小さな死神は首を縦に振った。これでいいのだ。いままで安らぎを求め続けていたのだから。
その他
公開:24/01/02 21:55

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容