新しい鍵

龍である私は兎から干支を引き継ぐと早速、兎のぬくもりが未だ残るこたつへと潜り込む。
空の上はめっちゃ寒かった。
下に降りれば多少寒さが和らぐかもしれないが、その姿を写真に撮られ、SNSにアップされる危険性がある。
１２年前はUMA呼ばわりされショックを受けた。
テーブルの上にはミカンが置かれてある。ありがたい。後でいただくとしよう。
でもその前に、今は一眠りだ…

目が覚めるとミカンが消えていた。
ミカンだけではなく、私の逆鱗もなくなっていた。
ミカンのあった場所にはオレンジ色に染められた兎の毛。
迂闊だった！今年も兎にしてやられた！
うかつのうはウサギのウ。このこたつがよもや罠であったとは…はぁ…１２年後、気を付ける様にしよう。
こたつのたつは辰年のタツ。今はこの中から出たくない。
それに手の届く範囲にちゃんとミカンは置かれていた。
兎は私の心を開く新しい鍵を置き土産にして帰っていた。