テレパス

今ほど携帯電話の電波状態が良くなかった時代。少しでも電話の繋がりやすい場所を探す為、誰もが”テレパス”という道具を持っていた。
テレパスとはテレフォンコンパスの略で方位磁石のようなもの。テレパスが指し示す方に行けば、電波は繋がりやすくなる。
昔はテレパス片手に少しでも電波のいい場所を捜し歩いたものだ。
そのテレパスはよく故障を疑われていた。
テレパスが指し示す方向に行っても電波のいい場所が見つからなかった。
テレパスの針が突然、おかしな方向を向き始めた。
だがそれら多くは、故障ではなかった。
テレパスとは、そもそもが人と人とを繋げる為に作られた道具。
なのでテレパスは電波のいい場所より、思いを伝えたい人のいる方向を優先して指し示す。
伝えたい事は面と向かって言った方がいい。
そんなテレパスに背中を押され、彼女に告白した私。
テレパスはあの時から私達が夫婦になる道を指していたのかもしれない。