春先の雪だるま

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「ゆーきやこんこ あられやこんこ」

声がする方に行くと物置小屋の陰で雪だるまが歌っていた

雪だるまはなぜか関西弁でお話し好きだった
子供だった僕は人懐っこくて愉快な雪だるまとすぐに仲良くなった

たまに日差しが出てきては雪だるまは汗をかく
溶けていなくなってしまわないか心配だったけど、雪だるま側はそんなことはお構いなしにいろんな面白い話をしてくれた

お母さんやお父さんに言えない嫌なことも雪だるまには相談できた
雪だるまはいつも僕の味方で、僕を元気にしてくれた
僕は雪だるまと親友になった

春先になり、雪だるまは溶け始めていた
僕は氷を持っていったり、日差しが当たらないように雪だるまを守ったりした
だけど僕の願いは叶わなかった
雪だるまは最後まで笑顔でいつもの歌を歌っていた

「ゆーきやこんこ あられやこんこ」

この音楽が聞こえるといまでも窓の外を探してしまう

僕が子供の頃のお話し
青春
公開:24/01/07 12:06

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