リューレット

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黄金に輝く円盤の形をした品が、押し入れの奥から出されてきた。ルーレットのように見えるが、「リューレット」と呼ばれる我が家の家宝だ。龍が渦巻き状にとぐろを巻いたような形をしていることから命名されたという。
正月に凧揚げ、羽子板、福笑いなどで遊ぶのが恒例行事だが、我が家では十二年に一度の辰年に、リューレットで一年の運を占う。
リューレットには、時計の秒数のように〇から五十九まで番号が振られていて、回転する仕組みになっている。
「龍の玉」と言われる水晶の小さな玉をリューレット上に落として、回転している間に収まった番号の数だけ一年に良いことがあると伝承されている。
前回の辰年では、まさかの〇の番号に玉が収まって、一年間で良いことが何もなかったと記憶している。
今回は気合いを入れて、さあ、玉を投じる。コロコロとリューレット上を回り、ある番号に収まった瞬間、家族は一斉に狂喜乱舞した。
五十九だった。
その他
公開:24/01/07 07:18
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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