素敵なすき間

今日は運よく座れた。と思いながら電車で病院へと向かっていると目の前にお婆さんが立っていた。
席を譲ろうとしたら「大丈夫ですよ」と止められる。
私の大きなお腹を見て気遣ってくれたのだろう。でもこのままお婆さんを立たせておくわけには…
「丁度さっき隙間を買ってきたばかりなのです」
そう話すお婆さんは私と隣に座る人の間の小さな隙間に鞄から取り出したそれをポンと置く。
すると丁度お婆さんが座れるくらいのスペースが出来たではないか。そこにちょこんと座った。
「あら？少しだけ隙間が余っているわ。これ、どうぞ」
お婆さんからそれを渡される。どうしたらいいのだろう？
「胸に当てて御覧なさい」
それを胸に当てると涙が零れ落ちた。
「貴方の心に隙間を作ったわ。今から頑張り過ぎてはダメ。もっと周りを頼りなさい。甘えていのよ」
張りつめていた心に穴が開く。人を頼れるようになった私の心の隙間は余裕へと変わっていた。