風の博物館

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ここから手を入れてみて。
少年がガラスの真ん中に開いた穴から手を入れる。
冷たく乾いた風があたるのを感じた。
「木枯らしっていうんだ、冬の訪れを知らせる風だよ」

次の穴に手を入れる。さっきよりも暖かく、勢いを感じた。
「春一番、春を知らせる風、さっきよりも力強く感じるだろ」

ここは風の博物館。

ここは独特の感覚、冷たいけど人の熱気や情熱を感じて体が熱くなるのを感じた。
「珍しいね、舞台風っていうんだ。舞台の幕が上がるときに吹く風だよ」

風にはたくさん種類があるんだと少年は初めて知った。

「最後に君にとっておきをみせよう」

案内された場所に手を入れる。勢いがあるが、熱を体に感じる。なにか背中を押されているような、
いますぐ走り出したくなる気持ち。

「それは、順風だよ。この風を浴びた人は、勇気を持っていきていけるんだ。
君は順風を浴びたから、勉強も運動もきっと大丈夫だよ」
青春
公開:23/12/26 15:27

空飛びペンギン( 関東 )

ご覧いただきありがとうございます。

俳優業の傍ら、趣味でショートショートを製作しています。
田丸先生の書籍を読んでから、楽しく作っております。
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名作文学の朗読Youtubeを行っています。
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