忘れたい今年の思い出、ありませんか

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「忘れたい今年の思い出、ありませんか」
少女がひとり、夕暮れの街角に立っている。今日は12月31日、大晦日。

ほとんどの人が、足早に通り過ぎていく中、時折、足を止める人がいて、
「忘れたい思い出は、こちらへどうぞ」
少女は、手に抱えた壺を差し出す。

思い出を吐き出した人は、みんな見違えるように、すっきりとした顔になり「ありがとう」と、笑顔で立ち去っていく。

壺いっぱいに集まった思い出は、西の空へと運ばれる。そして、次の年の夕暮れ時、毎日少しずつ夕焼けに焼かれ、夕焼けの色を、より美しく染めあげる。
ファンタジー
公開:23/12/29 21:16
更新:23/12/29 21:49

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