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「支守子(しずこ)さん、先程はありがとうございましたワン」

 彼に表情は存在しないが、そこに落ちる影が今の心境を語っていた。

「いーわよエイ君、隣座りな」
「失礼しますだワン」
「鬼塚さん達も言い過ぎなのよ、《AIの癖に》ってさ、ドッグトレーナーとして造られたんだからすぐに出来るわけないっての!気にしなくて良いからね?」

 頷いてはいるが、気にしているのが小さくなる背中で分かる。

「人間はもっと暖かいものだと思っていましたワン」
「余裕がないからね、みんな」
「……」
「私とエイ君は似たもの同士だね」
「支守子さんは仕事出来るし、僕とは違いますよだワン」

 人差し指を左右に振り「恥ずかしいけど、私は家事が苦手で、よく夫に怒られちゃうの」なんて苦笑する。

「優しくされたいわよね」

 AIも人間も変わらない、"愛" を求めるんだな。彼を見て私はそう思った。
SF
公開:23/12/29 16:13
更新:24/01/06 17:41

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