才能削り機

「この恋愛小説、ちょっと無駄が多くない？」
書き上げたばかりの作品を友人に読んでもらうと、そんな感想が返ってきた。
「余計な登場人物が多い。もっと削れる」
そう言って友人は鞄から鉛筆削り器を取り出した。それも自力でハンドルを回し削るタイプだ。
友人はそれに私の作品を入れ、ハンドルを少しだけ回す。
「読んでみて」
削り機から取り出された私の作品。
目を通すと私の作品からなくてもいいシーンだけが削られている事に気づく。
「これ、才能削り機っていうんだ。その作品、君の文才から無駄を削ってみたよ。削ろうと思えばもっと削れるけど、それはお勧めしないね。だって恋愛小説なんてつまるところ『AとBが恋に落ちました』って結論だけで済ませられるんだから。過程という無駄は必要だよ。あと、人には使わない方がいい」
えっ？これって人にも使えるの？
「自分で試した。見ての通り、才能が尖り過ぎて君以外は離れていったよ」