おにぎり

2
1

「えー、またおにぎり?」
「何よ、文句あるの?」

貧乏だった子供の頃、休みの日のお昼は決まっておにぎりだった。
塩むすびに海苔を巻いただけの、良くあるやつ。

「せめて何か具入れてよ」
「贅沢言わない」
「ちぇ」

味噌汁とおにぎりだけのお昼ご飯。
正直、もうおにぎりなんて見たくないと思ってた。





「…頂きます」

味噌汁を啜り、おにぎりを齧る。あの頃と違って、ちゃんと中に具の入ったおにぎり。うん、悪くない。
でも、何かが違う気がした。

「…あんなに嫌だったのに、また食べたいな」

手に持ったおにぎりが、やけに塩辛く感じた。



今日は、母の一周忌だった。
その他
公開:23/12/23 10:42

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容