叫ぶイルミネーション

「好きだー！」
「バカヤロー！」

海に向かって叫ぶのは、無数に連なる青の光。イルミネーションだ。
冬の海は夏に比べて訪れる人の数が少ない。美しい青い海と白い砂浜が自慢のこの町では、冬にも沢山の観光客を呼びこみたいという声があがり、海岸沿いをイルミネーションで彩ることにした。夏は眩しい太陽で波を煌めかせていた海を、冬はホタルイカのような青い電飾の光で輝かせたのだ。
狙い通り、海は冬でも大盛況となった。しかし、しばらくすると不思議な現象が始まった。イルミネーションが叫び出したのだ！仕事でミスした人、失恋した人…色んな人が海に向かって叫ぶのを、電飾達が真似るようになったらしい。あんまり大きな声で一斉に叫ぶので一時は撤去も考えられたが、観光客からはイルミネーションの叫びに自分の声が紛れて叫びやすくなったと案外好評だった為そのままとなった。
青の輝きを背景に、私も大声で叫ぶ。


「頑張るぞ―！」