素敵なすき間

私は猫の香箱、前足を胸元にしまい込むように座り込むあの姿が大好きだ。香箱を組んでいる猫を見ると、思わず前足の隙間に手を突っ込みたくなる。
今日も誘惑に負け、猫の胸元へと指を差し込む。
ちゅるんっ！と、私は猫の香箱の中へと吸い込まれた。香箱の中はフサフサでとても気持ちいい。
毛をそっとかき分けてみると外の風景が見えた。
香箱の中にいる私は蟻くらいの大きさなのだろう。毛の隙間から見える外の風景はとても大きかった。
そのまま猫が散歩に出かけると見知った風景の知らない一面を発見できた。おっと、急に走らないでくれ。私は乗り物酔いしやすいんだ。
猫が再び香箱を組む。私は入って来た時とは逆に、香箱の外へと手を伸ばす。
すぽんっ！と、私は猫の香箱の外へと吐き出された。時計を確認するとまだ１時間も経っていない。
大冒険のように感じた時間は猫の体感時間だったようだ。人間の隙間時間で味わうにはタイパ最高だった。