幸せを奪う仕事

「危ない！！」

その言葉が頭をよぎった瞬間からの記憶がない。
不思議な、ふわふわした感覚がする。

「目が覚めたかい？」

仕事ができそうなサラリーマン風の男が部屋に入ってきた。

「いいかい、聞いておくれ。君はひき逃げにあって死んでしまった。本当に残念だったね。」

男は申し訳なさそうな顔をしてつぶやく。

理解できなかった。だってさっきまでいつものように仕事をして、これから家に帰って小学生の娘と映画を見る約束をしていたのに。

男は続けて、こう話した。
「君にはある仕事をしてもらいたい。悪事を働いた人を捜し、幸せを奪う仕事だ。まずは君をひき逃げした犯人を捜し、幸せを奪ってくるんだ」

「幸せを奪うですって。もしかして、僕は悪魔になったんですか？」

「逆だよ。僕たち天使は悪い人から幸せを奪って、不幸な人に幸せをおすそ分けするんだ。まずは君の家族に幸せをおすそ分けしてあげなさい」