素敵なすき間

「パンはパンでも、飲めるパンってな～んだ？」
シャンパンを手に持つ夫に謎々を出す。
「何だろう…」と考える夫。手元の答えが目に入っていないようだ。
そんな思考の隙間をかいくぐり、私は夫の唇を奪う。
「何するんだ！」と驚く夫。結婚してもう１０年も経つのに変わらぬ初々しさが可愛くて堪らない。
顔を真っ赤にして「まったくもう…」なんて、まんざらでもない表情を浮かべる。
夫は考え事をしている時、その唇がアヒルみたくとがる。そんなの「キスして下さい」って言っているようなものだ。
ちなみに夫はその癖に気付いていない。私も教える気はない。
「もう二度と不意打ちは食らわないからな！」と宣言する夫。
私はすかさず「今夜は鶏肉を使った料理を食べたいな」とリクエストする。
専業主夫の夫はすぐさま今夜の献立を考える。その隙にまた唇を奪う。そんなやりとりを楽しむ。
この隙間は私だけのもの。誰にも譲れない私の宝物だ。