窓越しのテレパシー

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私は出窓に腰かけ、外を眺めた。
隣家のカーテンはまだ閉まっている。

「今日は雲ばかり、陽も出ていませんのね」

聞こえるはずのない言葉は小道を超えて、
濃紺のカーテンを開く魔法になったようだ。

「やぁ、元気かい」

隣の彼とは毎朝、顔を合わせる。

「いつも通りよ」
「そうかい。僕は好調さ」

いつも素っ気ないと思われるだろう。
正直に待っていたと言えないのは、棘のある性格のせいだ。

彼は話を続けてくれる。

「僕ん家の浄水器が新しくなったからか、体が軽いんだ」
「単純なのね」

「昨夜は珍しくジャズがかかったんだぜ」
「うちは年中クラシックだけ」

変化の少ない日々、彼との会話には地味ながら花が咲く。

(楽しい時間をありがとう)

私の心だけは動いている。

夕方になり、2邸のカーテンは閉じられた。
そろそろ水が欲しくなってくる。

明日も、私たちサボテンはテレパシーで会話する。
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公開:23/12/11 15:47
更新:23/12/11 17:52

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