星屑取り

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夜空を眺めると星がひとつも見当たらない。
今宵は、星屑取りが空に輝く星をすべて拾ってしまったらしい。
星屑取りの姿をはっきり見たものは誰もいないが、地球で籠を抱えて塵芥を拾う人間とそっくりなシルエットが月光の影に映ることがあるらしい。
星屑取りは、ときどき宇宙に現れると星を拾って籠に入れ、その集めた星で惑星をつくる創造主の化身といわれている。
星屑取りがつくった惑星が何万光年もの歳月を経て星屑となり、それを拾って再び惑星につくり直しているわけだから、星屑取りは「宇宙のリサイクル屋」ともいえる。
ある夜、いつも以上に星が輝く満天の美しい空だった。銀河が煌めき天の川に無数の星ぼしが流れる。
星屑取りが、うっかり拾った星を籠からこぼしてしまい、その星たちが宇宙に散らばったせいらしい。
星屑取りは、少しおっちょこちょいなところがあるので、毎夜どんな星空が見られるか、天体観測の楽しみのひとつである。
ファンタジー
公開:23/12/09 06:48
夜空 地球 宇宙 惑星 リサイクル 銀河 天の川

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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