フラワーレコーダー

機械の中に土を詰め、種を植える。
再生ボタンを押すと、機械に記録された花の情報が植えた種へとインストールされる。
続いて早送りを押す。種は物凄い速さで成長を始めると、あっという間に花を咲かせる。
あとはいい感じのところで停止ボタンを押しっぱなしにしておけば、花は美しさを保ったまま、枯れることなく存在し続ける。
フラワーレコーダー。それがこの機械の名前だ。
今や花の生産農家の殆どがフラワーレコーダーを使っている。発芽率を考えなくていい。種を植え、再生ボタンを押せば、花はクローンのようにいくらでも再生できるのだから。
そんなフラワーレコーダーを祖父母はこよなく愛している。
「この花はな、儂らが学生時代に育てていた花なんじゃよ」
「これをね、お爺さんと二人で育てているとあの頃に戻った気分になれるのよ」
そっか…祖父母が再生しているのは花だけじゃないんだ…
青春時代まで再生できるなんて素敵じゃん。