好き間

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僕の家は古くておんぼろで、あっちこっちにすき間がある。
夏は暑いし冬は寒いし、住み心地が良いとは正直言えない。きれいで今風な友達の家をうらやましく思う事もある。
「アタシは好きよ。合間に切れ間、束の間なんかじゃ据わりが悪い」
飼い猫のニャンがあくび混じりに言って、壁のすき間で丸くなる。猫は狭い所が好きだものね。
「おいらも好きですぜ。新しい家は気密だ断熱だって、まともに通れたもんじゃない」
窓のすき間を通りすがりに、すき間風がひゅんと口笛を吹く。赤いモミジが宙返りして僕の手に落ちた。

通りが雪で白く染まった夜、天井のすき間からシャンと鈴音が降ってきた。
大きな袋をかついだサンタさんが、にこにこしながら部屋中にプレゼントを広げた。
「わしも好きだねぇ。近頃の家は煙突がなくて、入るすき間を探すのも一苦労だ」

古くておんぼろで、あっちこっちにすき間がある。
そんな家が何だかんだで僕も好きだ。
ファンタジー
公開:23/12/11 18:17
月の音色 月の文学館 テーマ:素敵なすき間

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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