走馬燈メガネ

馴染みのジャンクショップで店主に掘出し物を勧められた。
「メガネ？」
「かけた人の人生が走馬燈のように映る走馬燈メガネです。」
「これは安い！」
「はい。不要になったら返却ください。お得意様だけの無期限レンタルです」
メガネを買って帰り、就寝前にかけてみた。自分の幼時から小中学生の映像が流れる。音楽はないが若い両親とか懐かしい。続いて高校大学、会社、妻との出会い、結婚、子育て、走るように映像が過ぎる。別れた恋人や音信不通の友人も映る。父の葬儀シーンで映像は終わった。感動の気分だ。次の日もメガネをかけた。同じ映像にまた感動した。翌日の日曜日は朝からメガネをかけてジーンとした。次の日もまた走馬燈を見た。
十日後、ジャンクショップに行った。
「返却するよ」
「よろしいですか。メガネのご感想はいかがで？」
「うーん、死ぬ間際にはいいんだろうけど、毎日見るもんじゃないね、まだ生きているんだから・・」