ほっとカーペット

冬に備えホットカーペットを買った。早速電源を入れる。
しかし一向に暖かくならない。不良品を掴まされたかもしれないが不思議と気分は悪くなく、むしろ穏やかな気持ちで心がじんわり温かくなっていくのを感じた。
説明書を手に取り落ち着いた気持ちで読むとその理由がわかった。
これはホットカーペットではなく、ほっとカーペットだったのだ。
暖めるのではなく、その上に居るとほっとするカーペットだった。
普段抱えている漠然とした悩みや不安が溶けるように消え、心底ほっとした気持ちに包まれた。

ハッと我に返る。
外はすっかり夜になっていた。どれくらいの時間が経ったのかと時計を見ると８時間も経過していた。
恐ろしい事に、その間ただぼんやりと安堵していたということなのか。
どうやら一定の時間が経てば自動で電源が切れる仕組みのようだ。
もし切れていなければそのまま安堵し続けていたかもしれないと思うと不安になってきた。