いただきます

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「食えよ」
男は干し肉を差し出した。
最後の一切れだったが、
食欲より善意が勝っていた。
「いいんだ」
ヴィーガンは乾いた声で拒み、
そして遂に息絶えた。
干からびた地面に、男の涙が落ちる。
環境破壊によって地球は食料危機に陥っており、
無数の人々が飢え死にしていた。
今、ヴィーガンはその一人に加わった。
主義は違えど、
共に旅してきた仲間が死んだのだ。
「バカ野郎」
男は呟きながら最後の干し肉を口に運んだ。
しかし広大な荒野を渡り切れる体力は養えず、
その場に寝転ぶしかなかった。
数日後。
飢えに耐え切れなくなった男は、
ヴィ―ガンの死体を食べた。
無我夢中で食った。
肉を食べていないからか、
異常な美味さだった。
男は初めて心を込めて、
「ごちそうさまでした」と言った。
青春
公開:23/12/07 20:05

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