養愚庵

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無知が称賛される時代になった。AIやロボットが進歩して人間ファーストの環境が整備された未来世界のことである。労働や経済活動は不要。人間はただただ享楽生活を送る。知識や知恵もAIに任せる。人間にとって知識は邪魔。覚えた知識を捨てるため人々は知識の忘却に努めた。思考は邪悪とされた。論理思考はAIがする。理屈をこねる人間は下等とされ、人々は純粋な無思考に憧れた。
学校はすでに消滅し教師はいない。大学は悪の権化であり、大学教授とか研究者たちは孤島に流されて、いつのまにか消息不明。世の中には何も考えずのんびり生きるのが理想であり人々は無知に励んだ。無知を極めるため人は修行に押し寄せる。有名な修行の場が養愚庵である。ここで人は無言で飲食と散策の日々を過ごす。思考せず感覚に生きる場である。
養愚庵の庵主は姿を見せることがない。庵主とはAIではないかと疑念を抱いた者は即刻、庵から追い出されたそうである。
その他
公開:23/12/07 17:42

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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