ゆれる心

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 大変だ。俺が慌てて視線を上へ向けると、ソイツも驚いた顔で俺を見下ろしていた。
 良いか、突然走り出したり、その辺の人にじゃれついたりするなよ。俺達は、互いの精神が入れ替わっているんだ。

 よく聞けポチ。お前は今、人間になっているんだよ。
 ああっ、俺の顔でそんな寂しそうな表情をするな。大丈夫だから、たぶん大丈夫だから……!

「ご主人、大丈夫です。俺はいつもご主人を見てきました。俺達が元に戻るまで、無事にあなたを演じてみせます。戻り方も調べますから、そんな顔をしないで」

 ね、ご主人。そう微笑みながらしゃがんだポチが俺を撫でる。先程までの強い不安が嘘のように全て消え去る。
 ――お前、なんか俺より利口そうだな? そんで俺よりイケメンだな?
 犬と化した俺の顔を嬉しそうに撫でるポチの温もりを感じながら、奇怪な現状に困惑しつつも、尻から生えた呑気な俺の心はブンブンと元気にはしゃいでいた。
その他
公開:23/11/28 11:39

あずきヤス

お話を書くのが好きです。
いつかお話書きを仕事にしたいです。

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