ハーフ＆ハーフ

人間に強い恨みを持つ私は山猫軒の従業員を名乗る猫の『ウチで働きませんか？』に強く頷いた。
捨て猫というだけで私を忌み嫌い、暴力の限りを尽くした人間め…今こそ復讐の時だ。
そんな強い恨みを持つ一方で毎日私に餌を運んできた人間がいた事も思い出す。たった一人の人間の行動が私の決意を揺れ動かす。
『どうしました？人間に煮え湯を飲まされてきた貴方が今度は煮え湯を飲ませる側になれるんですよ』
首を傾げる従業員。…それもそうだな。あの人間がこんな山奥くんだりに来るとは思えん。私は復讐の道を歩むとしよう。
そんな私の体が誰かに持ち上げられる。
「やっと見つけた…」
私に餌を運んでいる人間だ。目に涙を浮かべ私との再会を喜んでる。
…従業員よ。すまないが今暫く時間をくれるか。今だけはこの人間と共に歩みたい。
私は人間が嫌いだ。だがこいつの事は好きなんだ。
五分五分で揺れ動く気持ちを整理する時間が私には必要だ。