燃えだした赤

『燃えるような赤』という言葉があるが、ある日を境に突如その言葉が具現化するようになった。
つまりは、赤い色から炎が発火するようになったのだ。
その影響は凄まじく、赤い口紅は禁止され、食卓から赤い食材は消えた。５人編成の戦隊は４人に削減され、あらゆるデザインや芸術から赤の姿は消えた。更には出血を伴う怪我は火傷を負うリスクをも発症してしまう。
赤はあらゆる場面で禁止され、そして誰しも赤に過敏になった。

「あのこのイメージカラー赤だったんだよな」
徹底的に赤を排除した演出のコンサート。開演を待つ観客にも赤を着用する者は居ない。
「みんなー。赤いミィコはお預けだけど、みんなの心の中の赤までは消せないからねー」
颯爽と登場したアイドルに観客は熱狂する。
しかし程なく公演は中止を余儀なくされてしまう。
初めてアイドル本人を目の当たりにした観客の複数人が、興奮のあまり紅潮し顔から火をふいたのである。